【短篇小説】浮世を離れて旅を『天使の番』
- 物販商品(自宅から発送)あんしんBOOTHパックで配送予定¥ 800
ーー例えるならこれは、ひたひたと湖畔に寄せる漣ーー 風情が、美が、情欲や人情に先行する……情景が語りだす旅の短篇 ーーーー 旅人、といってもこのお客を示して言うときのそれは、ヘミングウェイや谷崎潤一郎と同様の性質で緩やかに生活の場を移していく、ある意味では根っからの旅人であり、俗に言う旅人とは少し違う。 「共鳴という言葉を聞いたことはありますか」 巻き終えたスパゲッティを尚も無心で巻き続ける。その手を止めた彼女の発声に続くように、混ざり合う談笑が戻ってくる。 石の壁に背を預け、細い街路樹に背を預け、私の寂しさは土の中へと還っていく。そこには人の言うような虚しさもなく、ただ風は吹き、川面は揺れ、太陽は西へと傾いていく、何かそういった事象と変わらないひとつになるのである。 彼女の信仰について、共鳴の話それ自体がそうであるとも言える可能性はさておき、私は尋ねたことがなかった。 ーー以上本文より引用
ーー例えるならこれは、ひたひたと湖畔に寄せる漣ーー
風情が、美が、情欲や人情に先行する……情景が語りだす旅の短篇
ーーーー
旅人、といってもこのお客を示して言うときのそれは、ヘミングウェイや谷崎潤一郎と同様の性質で緩やかに生活の場を移していく、ある意味では根っからの旅人であり、俗に言う旅人とは少し違う。
「共鳴という言葉を聞いたことはありますか」
巻き終えたスパゲッティを尚も無心で巻き続ける。その手を止めた彼女の発声に続くように、混ざり合う談笑が戻ってくる。
石の壁に背を預け、細い街路樹に背を預け、私の寂しさは土の中へと還っていく。そこには人の言うような虚しさもなく、ただ風は吹き、川面は揺れ、太陽は西へと傾いていく、何かそういった事象と変わらないひとつになるのである。
彼女の信仰について、共鳴の話それ自体がそうであるとも言える可能性はさておき、私は尋ねたことがなかった。
ーー以上本文より引用